フィレンツェ,ピサ

 イタリアでは,ピサに宿泊した。朝,斜塔のある教会へ向かうのが散歩コースだ。
 斜塔に登る。その傾斜によって,階段が急になったり,水平移動のようになったりする。そんな違和感を抱きながら上り詰めると,あまり厳重な柵を施していない頂上にたどり着く。眺めが良く,街を見渡せる。
 街にはいくつかの鐘楼があるようだ。遠くで鐘がカンカンカンカーンと鳴ったかと思うと,次に斜塔の鐘が鳴り,また別の方角で鐘が鳴る。耳元の斜塔の鐘は結構うるさいが,鐘の音の順繰りに響き渡る様には,情緒を誘う空気感があった。

 散歩から帰ると,フィレンツェに向かう。ピサとの間は,在来線の電車で1時間弱,ちょうど千葉から東京まで総武快速に乗るような感覚である。ユーレイル・ユースパスを見せれば乗車できるので,毎日の通勤感覚を楽しんだ。電車内はかなり陽気で,人々の会話や笑い声でいっぱいである。
 フィレンツェでは,ボッティチェリの絵画やダビデ像を見て,また,夕方,アーノンクールのコンサートに行くなどして過ごした。

 なお,ホテルに着いた矢先にカメラを床に落として壊してしまった。ちょうどそのころ,日本人の,場をわきまえない傍若無人な写真撮影に嫌気が差していたので,カメラがないことは,周囲から同一視される心配がなく,好都合だと思っていた。

  data
  日時:昭和63年2月27日(土)−同年3月1日(火)


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