房総しぶのさん島   〜房総半島からの独立

 房総半島には,北緯35度6分付近で東西に伸びる帯状の山々(ここではランドラインと言う。)があり,房総半島の他では見られない蛇紋岩が産出するなど地質学的に異質であり,これは房総半島を南北に分断している。
 ランドラインの北側には,より東京に近い木更津市,君津市等々があり,南側には,わがふるさと館山市や南房総市がある。そして,東西に伸びたランドラインのうち,東方には嶺岡の山々があり,一方で最も西に位置するのは,東京湾を臨む鋸山(のこぎりやま 標高329.4m)である。

 鋸山は,房総半島にとって最高峰に近い。そして,館山の人にとって,東京方面へ北上する際どうしても越えなければならない壁である。
 幼少のころ,鋸山を越えて北上し,君津市のダイエーに行ったことがある。今でこそ日用品購入のためだけに遠くの街のスーパーマーケットまで行く機会は多いが,そのころそのような遠出は稀だった。ダイエーの地下では,ソフトクリームだの焼きそばだのが,極彩色にディスプレイされた個々のテナントに置かれていた。普段,甘太郎(今川焼き)や焼きそばを食堂「あおき」でしか食べたことのない私にとって,夢の世界だった。
 要するに,鋸山は単に地質的な壁ではなく,その向こうの異質な世界感を覚える,文化的・精神的な壁なのである。

 房総「半」島。

 あの極彩色の君津であってさえ,半ば島と称するなら,ランドライン以南の地域は,その四分の三が島と言わねばなるまい。「半島」のように陸続きとは言い難く,かと言って,「島」の潔さはない。

 房総「四分の三」島である。房総半島から独立して,房総しぶのさん島になろうじゃないか。

     *

 「館山って,なんもないとこだね。」と千葉県外出身の人に言われたことがある。
 その人は若いころ家出をして,闇雲に電車に乗り,行き着いた先が館山だったという。その人は,ふらりとやって来てさらりと分かっちゃうような,家出せざるを得ないやるせない気持ちを解消してくれる上っ面の娯楽があるとでも思ったのだろうか。
 館山に上っ面の娯楽なんてない。なにもない。慰めてはくれない。しかし,なくていい。そのままでいい。そのままがいい。それが好きだ。そんなものを求めたければ鋸山を越えればいい。その人にとっては,南下せず君津あたりに留まれば良かった。
 つまるところ,しぶのさん島という微妙な立ち位置に,えも言われぬ魅力があるのである。慰めこそないが,癒されんだよなあ。おめじゃ分かんねっぺ,私にも説明がつかないのだから。

      館山のそのまま

 


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 なお,房総しぶのさん島人にあっては,アバラ骨が1本欠如する。この特徴は,館山のゆるキャラ「ダッペエ」にも言える。

 

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